|
建築主より、御自宅の建築計画を初めて伺った時から、約5年経過して完成している。
建築主のYさんは周到に再生計画を立てられたと思う。Yさんは、私達の事務所が手掛けた再生住宅・・・信楽の家、蜂屋の家、湖北の家、東主計の家・・・を、工事途中、又完成後とすべて御覧になっている。再生される工事の工程、又再生された住宅の性能又品質などすべて承知の上で、平成17年4月に私共の事務所に正式に設計依頼された。
建築主が再生することを決断する場合、家族内の合意、又住宅の性能・品質・機能の担保など解決すべき問題が多い。そのため私達の事務所では、再生される住宅に対する色々な問題点・疑問にお答えはしても、「再生の決断」を催促することは、絶対にしないようにしている。長い年月を経てきた古民家は、そう簡単に再生できるものではないことを経験上知ってもいるからである。
Y邸は、明治41年に上棟され、築100年を経過した湖北地方の典型的な民家である。
- 再生工事計画時のご要望
1.家族構成の変化に伴い、個室を設ける・・・2階間取りの変更
2.水廻りの改修・・・設備の更新
3.構造的な補強・・・現況調査・耐震診断を行った上で、必要な耐力壁を設置する耐震補強
4.北側の床下に湿気がたまりやすい・・・防湿コンクリート工事
建築主のYさんは山林を所有されており、今回の工事では山の木を数本切り、乾燥を待って住居内の各所に使用した。
また、今回の工事で張替を行った玄関土間の天井板を各個室の壁で再使用したり、煤で真っ黒になった荒壁を仕上としてそのまま残したり、Y邸につまった100年の歴史と変遷を感じる事ができるよう工夫している。
建築主のYさんには、『全体のデザインはおまかせする』とおっしゃって頂き、緊張感を持って設計作業に臨んだ。また、工事担当者、又各職人さん達の熱意によって、細部まで精緻な美しい仕上りとなっている。
|
|