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「民家」は、日本だけでなく世界中のあらゆる国に存在する。
それぞれの国又地域で、それぞれの風土に合った住まいが造られ洗練され、美しい風景をつくっている。
2011年10月、イタリアを旅した。
ローマ、フィレンツェといった古代又中世の都市で、重厚な人間のスケールを超えた石造りの名建築に何か少し違和感を感じながら旅する中で、地方の民家が見たい気持ちが増してくる。
訪れたのは、南イタリア、プーリア地方の町アルベロベッロにある円錐形の石造り住居。(トゥルーリと呼ばれる)
構造は、外壁・屋根共モルタル等の接着剤を使用せず石を重ね積み上げただけの簡素で原始的な建造物。
その歴史は古く有史前、中東よりギリシャを通じこの地に伝えられたという。トゥルーリの屋根の頂部には様々な形態の小尖塔が置かれ、これは太陽崇拝又は魔除けの意味を持つとされている。
学生時代に、豊かなまちをつくる条件のひとつに『歴史ある建物が残り、道は曲がりくねって細く、人口密度の高いまち』と学んだ記憶がある。それは、過去の歴史との絆の中で、濃密なコミュニティ・人と人との絆の中で集まって暮らすことと思っている。
アルベロベッロのまちを歩きながら、そんな歴史と人の絆の中にある豊かなまちを体感していた。
20世紀型の便利さを追求した家、町なみはそこにはないが、心豊かに暮らせるまちがそこにある。
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