滋賀県東北部・長浜市(旧びわ町)川道に位置する東雲寺は、弘仁8年(817)、伝教大師最澄上人が東国巡下の折に開基されたと言われています。長い年月の間には、幾多の戦乱や江戸時代の宗教統制による栄枯盛衰がありましたが、約1200年間にわたる深い信仰を得て、現在に至ります。
現在の本堂は、寛政年間(1790)の大火による焼失の後、文化３年(1806)から十数年の歳月をかけて再建されたものです。

この歴史ある「東雲寺」を重要文化財として残そうとする動きも見られる中、既存庫裡(築約200年)の改修と敷地北東部に庫裡の新築を行うことになりました。
改修部分は構造的に必要な手を加えながら、約200年かけて築かれた文化的価値を守り、時代に対応できる機能も備えました。
新築部分は、ご住職(吉田慈敬さん)と模型でバランスを見ながら形を決め、「中庭の眺望をたのしむ居間」と「水路を望む浴室」を特にこだわってつくりました。
ご住職の｢古さを理解しているがゆえ、新しさを取り入れることは否定しない｣という考え方に緊張をほぐされ、納得行くまで考えぬくことが出来ました。
現在、建設中の納骨堂はご住職自らの発案によるものですが、コンクリートの打放しが美しく古い本堂との対比が気持ちの良い建物です。