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長浜市内近郊の集落(小野寺)内にある民家の再生事例。
集落は山裾の傾斜地であるため、敷地割は階段状となり、土留めとしての古い石積みが各所に見られる。集落の地形上、石は村を災害から守るため大切に扱われ、又石の集落外への持出しは厳禁されていたという。
I邸は築後150年を経過し、新築するか、又は再生(改修)するか迷われる中、専門家の目で一度見てほしいと依頼を受けた。早速に現地へ伺い民家と対面する。堅固で逞しい架構を目前にして、即再生を勧めた。
これまで多くの古民家に出合い、対面し調査している経験からか、家の状況を瞬時に直感で感じることがある。念のため、詳細な現況調査をするが、改めて「再生」することを勧めた。 再生工事を進めてゆく中で、先導役をされたのは、この家に嫁がれた若い奥様であった。私達の事務所を見つけ、評価いただいたのもこの方で、工事中は黒子となって施工側との緩衝・調整をいただいている。民家の価値を認め維持されてゆくのは、そこに育った家族ばかりでないと感じている。
Iさんの親父さんの話では、幼い頃、大黒柱又差鴨居等へ傷を付けるような事があると、厳しく叱りを受けたという。そんな住まいと住人との関係の中で、住居は守られてきた。
工事中も大黒柱、差鴨居への手入れは極力避け、細心の注意を払っている。I邸では最近まで木部の手入れは自家製のごまの木の煮汁で毎年磨き続けられたという。古くから各家に伝わる「磨き」のメニューがあるようである。住居は家歴を継ぎ、住み継ぎ、又家族を守る一員として、又体の一部として大切に美しく維持管理される湖北の住まいのあり方を感じる。
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