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計画当初、傷みの激しかった町屋(旧松浦邸)を建築当初(大正中期)の形に復元し、歴史資料館として利用してゆく、という方向で検討されていた。しかし、途中で建築の復元が「ミイラ保存」的にならぬよう、活きた形で活用しながら保存するための改修を行うこととなった。
現存する歴史資料館の多くは、古い歴史や民俗資料を陳列した「古色蒼然」とした建物であるが、今回、古い佇まいの中にあえて新しさを挿入し、古いものと新しいものがせめぎあう、そんな建築空間の創造を試みた。
母屋と資料展示棟をつなぐ渡り廊下は、そういった意味合いから、あえて鉄骨造とし、透明感のあるメタリック塗装を採用した。
また、母屋前の旧来の庭園と今回の工事で新設した現代の庭園を、コンクリート打ち放しのスクリーンであいまいに仕切り、厚鉄板の飛び石など(現代の素材)を用いてつなげることで、時代の融合を表現している。
「歴史資料館」という古い建物を訪れ、現代の空間にも出会える、そんな建築になることを願った。
併設された喫茶コーナーには無垢の木のビッグテーブルを配置し、地域の人々と来訪者が出会いふれあいが生まれるような建築的仕掛けを試みた。
時折、喫茶コーナーを訪れると、見知らぬ人(来訪者)と地元の人の会話が弾んでいる場面に遭遇でき、良き「交流の場」として受け入れられたことを実感している。 |
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