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数年前に主屋(現在は、長浜市観光インフォメーションセンター)の再生工事の設計を担当して工事は完了し、引続き隣接する土蔵をガラス作家の展示館として再生することになった。
展示館としてのアプローチは、西にある既存入口は修復して残し、東にあるポケットパーク側に新設している。 新たなエントランスは、伝統的な土蔵の入口の形式を踏襲するのは避け、ポケットパーク内に設置されたガラスの黄金屏風に呼応するモダンなデザインとしている。
この事例は、長浜市発注の公共工事であり、施工者は設計図書、仕様書に基づく競争入札によって決定されるため、我々設計者には詳細な修復仕様書の作成が発注者より求められることになる。
再生工事における修復仕様書の作成、又破損部分の表現の難しさを感じながら現況調査は徹底して行っている。
土蔵の外壁、柱の破損は激しく、過半の柱脚は蟻害を受け損失し、 建物は南東へ大きく傾いていた。柱の破損の度合い(範囲)については、 レジストドリルに相等する方法で、その深さ、高さを詳細に調査している。 各部位の破損の度合い、又修復の方法は、設計図書に詳細に記載され、 不測の破損箇所は発見されず工事を完了している。 工事の期間中、土蔵内にあった箪笥の中から往時の小判が発見され、マスコミをにぎわしている。現在その小判は隣接する曳山博物館にて展示されている。 2間×3間の小さな建築であるが、大規模な建築である曳山博物館の横で大きな存在感を発している。細部まで造り込まれた質の高い歴史建築物を残すことで生まれる町の豊かさとその意義を実感している。 |
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