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旧中山道より路地を少し入った位置にある専用住宅。
狭小な敷地であるが、建築主から要求された空間・室をすべて満たしている。建築主から出された要望は、家族構成上の諸室と吹抜と中庭と明るい日差しであった。そんな制約の中で、清楚で豊かな空間づくりを目指した。
外観は表通りの中山道を意識して、町屋のエレメントである格子を、現代にアレンジして全面に採用している。モダンな形となっているが、内部には8寸角(24cm×24cm)の大黒柱が2本あり、家を支えている。この柱は、施主の御両親の山の木を使用したもの。建築着工の前年の秋に伐採し、ひと冬山で寝かせて葉枯らしし、翌年の春に山より搬出し、天日乾燥の上
大黒柱として使用している。食堂、居間の床も同時期に切出された同じ山の杉を床板として使用している。
山の木の選定については、建築主と製材業者・設計者で山に入り、立木を選定した。その木から木取りできる材料を拾い出し、それに搬出及び製材の費用を加算した金額と、同材料を市中で購入した場合の代金と比較検討した。搬出が比較的容易な位置にあったこともあり、両者には差額がさほどない結果となった。自身の山の木を使用できる幸運に恵まれ、この住居のアイデンティティになっている。
今後も可能であれば、地元の山の木を使用し、地元の山の保全に貢献できればと願っている。
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