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設計の依頼を受けた時、建築主の要望は前面道路(十里街道)への景観を考慮した外観にしたいとのことであった。具体的に示されたことは、住居の前面に出格子を付けたいとのことでした。
十里街道は長浜市の中心市街地を南北に貫通する北国街道の東を並行して走り、古くより職人のまちであったところ。北国街道沿いで黒壁により活発におこなわれる景観、修景整備、又町屋の再生活用はまちの魅力となり、今や年間200万人を超える観光客を集めている。このようなまちの中で事業をされ、その近隣の場所で住居を建築されることから、その外観は、「僕のいえもまちの顔」であることを建築主は強く意識されていた。
住居の計画は東と西に建物を分節し、前面道路と近隣の住宅のスケールに合わせている。東の棟(道路側)は北国街道沿いでよく見かける置屋根形式の土蔵の形を現代的に模倣している。
住居内部については木造であることを五感で感じることができるよう、壁および天井の随所に木をあらわしにしている。
最近よく見かける「木造住宅」なるものは、木造とは名ばかりで、壁、天井裏に木部は隠されてしまい、「いったいどこが木造住宅なのか?」と感じる住宅が多い。
この住居のように、木組みの多くを室内にあわらしにすることは職人に多くの手間をかけることになる。仕事の跡がすべて見えてくるために、逃げ道のない仕事となるからである。内部の建具もすべて無垢の木材を使用し1本ずつ製作している。住宅づくりにおいて、建材商品カタログから部材をセレクトし、寄せ集めただけの住宅、そんな住宅づくりだけはしたくないと思っている。
今回は、建築主の仲間達が、基礎、建具、家具、又それぞれの設備工事の中で、それぞれの技術を建築主のため惜しみなく出してくれている。
最近、住宅づくりに携る中で感じることがある。まちの魅力は結局そこに住み、自分の住むまちを誇りに思い愛している人の個々の意識の集まりによってつくられていくように感じる。魅力的な長浜のまち、そのまちの魅力はその土地に住む人達の意識によって大きく変わってゆくのだろう。
現在、私達は長浜市内の中心市街地の中のまた中心部で、市内最古(築後約300年程度)といわれる町家の復元工事に携っている。復原計画(京都府立大学、大場研究室)、設計、又工事監理に取り組み、多くの市民の方、又行政の方と関わる中で、同じことを強く感じている。
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